「カミーノ」へ行ってきました、ヌー( @like_a_rhino )です。
2019年6月に、ポルトガルのポルトからスペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラまで、250kmを徒歩で巡礼(カミーノ)してきました。
きょうはそのカミーノの「8日目」の様子を。
うつくしい入り江の街Arcade(アルカデ)、歴史を感じる街Ponte Vedra(ポンテ・ヴェドラ)を通りながら歩いてきたものの、その日目指してたどり着いた宿はあまりにも雰囲気が悪く感じられて、とてもとても泊まろうと思えず…。
太陽がギラギラ照りつける中、どれぐらいで次の村にたどり着けるか、果たしてそこまで行ってその村でちゃんと寝床にありつけるのか、不安でぺしゃんこに押しつぶされそうになった一日の記録。
そんなわたしたちを助けてくれたのは、カフェのおばあちゃんでした。
▼雨の降る真っ暗な早朝に歩きだした「7日目」の日記はこちら。
目次
「この宿はちょっとイヤ…」な8日目、Arcade~Briallos、歩行距離26km
いまこの日記をまとめていて、この日の歩行距離が26kmしかなかったことにびっくりしています。
ちょっと精神的にハードないちにちだったので、もっとずっとたくさん歩いたような気がしてた…。
たっぷり朝食をとって、出発!
この日も、ガリシア地方の天気予報は一日中曇り時々雨。
6時に起き、荷物をまとめてキッチンへ降りていくと、すでに朝食が用意されていました。
60代と30代と思しきドイツ人母娘ふたりが、ミューズリーを牛乳で煮てシナモンパウダーをかけ、桃の缶詰をのせて崩し混ぜながら食べてる。
ドイツではスタンダードな朝食なのだそう。
カウンターには数種類のパンやシリアル。
テーブルには、プラムとビワ。
冷蔵庫からチーズやオレンジジュースを出し、お茶を淹れていただきました。
何か特別すごいものがあるわけじゃないけど、こういうふうに食べたいものを自分でちょこちょこ選んで食べられる朝食っていいなー!
日ごろから大したことをしているわけではないけれど、わが家の朝食もこういう風にしてもいいのかも。
この日はちょっとゆっくり目に、7時半少し前に出発です。
とりあえず雨は降ってない!
ポルトガルでもスペインでもよく見かけた、洗濯場になっている泉。
むかしはこういう所でみんなで洗濯物を手洗いしていたんですね。
相変わらず天気は曇りがちですが、この日は寒くはありませんでした。
湿気が多く、動き始めるとすぐに汗が出てくるような、じとっと蒸す感じがあります。
Ria de Vigo(リア・デ・ヴィーゴ)にそそぐ川に架かる橋、Ponte Sampaio(ポンテ・サンパイオ)。
うつくしい。
そしてもちろんこの橋は現役で、車がすごいスピードですれ違いながら走っていきます。
家々の間を通りながら、カミーノはちょっとずつ高台へ。
遠くに入り江をのぞみながらぶどう畑の間を縫って歩いていくと、こんな場所もありました。
巡礼者が、木の枝を使って金網のフェンスに十字架を作って残してる。
わたしもひとつ残させてもらってきました。
今日歩いた中で、巡礼者が各々木の枝を使って十字架を作って残している場所があった。
わたしもひとつ作って残させてもらってきました。
わたしと、今のわたしとつながりを持ってくださるすべての方々に、幸ありますよう。#Spain#カミーノ #camino#vamos_andando pic.twitter.com/bloNMBmF2B
— ヌー : すっきり、さっぱり。 (@like_a_rhino) June 19, 2019
道すがら、カミーノを象徴するモチーフがいっぱい出てくるようになってきました。
素朴なポルトガルと比べて、スペインは断然こういうカミーノ関連ものが多い印象です。
70代後半のドイツ人と思しきご夫婦は、2人そろって古ーいドイターのバックパックを背負い、ゆっくりながらも足取りしっかりと歩いていた。
きっとこれまでもずっと、二人でいっしょにあちこちたくさん歩いてきたんだろうな。素敵。
こちらはずうっと手をつないで歩いていた若いカップル。
このあと追い越すことになったので、ブエンカミーノ―!と元気いっぱいで声を掛けたら、
「…ブエンカミーノ…」
と2人してボソボソ~っと返ってきて、思わずYと顔を見あわせちゃった。
ラブラブでウキウキな声が返ってくると思っていたのに、ものすごい拍子抜け。
思わず、まさかこのあとどこかで心中とかじゃないよね…?と余計なことを勘ぐってしまうほどのローテンションでした。
巡礼者もいろいろ。
Ponte Vedra(ポンテ・ヴェドラ)に到着
丘を下った後は一般道や川沿いの緑道を通って歩いていきます。
道幅の狭い緑道を前後になって歩いていると、後ろからYが、
「いやー!ものすごく歩きがしっかりしてきたよねえ!」
と感心したように声を掛けてくれた。
うん、自分でもそう思う。
とくに緑の中を歩くときは、足がどんどん前に出てすいすい歩けちゃう。
11時過ぎ、川沿いのトンネルを抜けるとそこはもうPonte Vedra(ポンテ・ヴェドラ)の街の入り口でした。
駅前を通り、黄色い矢印は出ているけどこちらからむこうまでずーーーーっと工事中の道を抜けていく。
こういう場所でも、日本みたいに警備員さんが立って頭を下げながら誘導なんかしてないの。
通行する人が、それぞれ自分で気をつけてタイミングを見計らいながら通っていく。
うん、それでいいと思うんだよね。
ポンテ・ヴェドラの市街地は、「巡礼者の街」といった雰囲気たっぷり。
この大きな教会は、外のファサード部分に杖をつきひょうたんの水筒を持った聖ヤコブ(サン・ティアゴ)らしき人の彫像が。
中のスタンドグラスは帆立貝模様。
この鉄格子も、ひょうたんぽくて。
ちょうどこの教会でクレデンシャル(巡礼手帳)にスタンプをいただいて外に出た時に、お昼の12時になり鐘が鳴り響きました。
複雑なメロディーで曲の全体像はまったくつかめなかったけど。
そしてその名もずばり、「Praza da Peregrina」、巡礼者の広場という場所も。
地面に、「ポルトガルからサンティアゴへ」と読み取れる文章が埋め込まれていました。
この街、ここまで通ってきたいろんな街とちょっと雰囲気が違っていて、このあたりの建物の一階が回廊になった感じなど、なんとなくイタリアと通ずるところがあるような気がして面白かった。
入り江になった海が近いので、ひょっとしたら浸水などがよくあってこういう建て方だったのかな、なんて想像したり。
そうこうしているうちにまた雨がぽつぽつ降ってきたので、一旦休憩してお昼ご飯を食べることに。
ベンチで座ってこちらをにこにこ見ていたおじさんにお昼を食べるのにちょうどよさそうなレストランを教えてもらい、満腹になってカミーノヘ戻りました。
Ponte Vedraで通りすがりのおじさんに教えてもらったお店に行ってお昼を食べ、カミーノ に戻る近道を教えてもらい。
サンティアゴまで60.000km!!!#Spain#カミーノ #camino#vamos_andando pic.twitter.com/i4XTXouUIa
— ヌー : すっきり、さっぱり。 (@like_a_rhino) June 19, 2019
この時は先を急ぐ気持ちがあってさらっと通り抜けてきちゃったけど、ポンテ・ヴェドラはいつかもっとゆっくり巡ってみたい気がする素敵なところでした。
「この宿はちょっとイヤ…」
朝はすこし蒸すと思ったのに、お昼ごろのポンテ・ヴェドラは寒くて寒くて。
6月だというのに、街をゆく人たちの中にダウンのロングコートを着ている人がいるのも納得という感じ。
でも、雨だと思っていたら途端に青空が見えてきたり、ガリシアの天気や気候はほんとに複雑です。
カミーノ沿いには、聖ヤコブ(サン・ティアゴ)のモチーフを飾っている家が多くなってきました。
カミーノを誇りに思っているひとが多いんだろうなあ。
今回のカミーノでは、ところどころで自動販売機を並べた休憩スポットのような場所を見かけました。
ここはなんとシャワーまであった。
ガイドブックに「線路横断注意!」と書かれていたポイントを通過したのが、15時半ごろだったと記憶しています。
もう少しで今日の目的地のアルベルゲ(巡礼者用宿泊施設)に着く…。
カミーノも後半になると自分たちが歩ける距離感やペースが大体つかめてきたので、【Booking.com】で随時宿を予約するようになりました。
ただこの日だけは自分たちが歩けそうな範囲に予約可能な宿を見つけることができず、Barros(バーロス)というエリアにあるアルベルゲ(巡礼者用宿泊施設)にとびこみで泊まろうとアタリをつけて歩いてきていたのです。
カミーノの本ルートからは少し外れた場所にあるそのアルベルゲへ、道路に親切に書かれた黄色の矢印にしたがって奥へ進む。
どんどん奥へ。
結構奥へ。
そうしてたどり着いたアルベルゲですが…。
泊まるのをやめました。
上り坂を息をきらせてのぼっていって、ようやく見つけたアルベルゲ。
建物に入ろうとすすんでいくと、入口ドアの前で立ち話をしていた3人の若い男女がジロリと値踏みするように一瞥し、また話し始める。
中に入ると、ものすごい大音量でロック音楽が鳴っている。
事務所らしき部屋に入るとガンガンの音楽はそこから流れてきていて、ソファに座っていたトロンとした目のおじいさんがホスピタレイロ(管理人)がもうすぐ来ると教えてくれました。
その言葉どおりすぐにやってきたホスピタレイロらしき男性に、ベッドはあるか、できれば部屋を見たいのだけどと告げると、「ここは見ての通りのドミトリーだから個室はないよ、シャワーはそこ」と矢継ぎ早にまくしたてられました。
シャワーだと言われた場所はタイル張りのじめっとしたスペースで、その奥にちらりと見えたドミトリーはなんだかとっても薄暗い。
そのドミトリーの入口近くの二段ベッドから若い女の子ふたりが、やはりジロリとこちらを一瞥してさっと視線をはずすのが見えました。
ガンガン鳴るロック音楽、じめじめした空気、中にいるひとたちのこちらを値踏みするような目つき…。
あわてて「ありがとう、ちょっと失礼」と言って、一目散に外へ出ました。
友人Yと相談しあうまでもなかった。話してみればお互いまったく同じ意見でした。
もしあなたが「ここに泊まろう」って言っても、わたしは反対してたよ!
ここは、イヤだ!
ほかに行こ!
カフェのおばあちゃん、ありがとう!
3日目もそうだったけど、泊まるつもりでアテにして一日歩いてきた宿がダメだったときって、精神的なダメージが半端ない。
あとから冷静に振り返ると全然大したことない、いくらでもリカバリーが利くことなんだけど、その時は疲労も溜まっているせいか、自分の中で不安ばかりがどんどんどんどん増幅される感じがする。
このときもそうでした。
この先の地域にもアルベルゲ(巡礼者用宿泊施設)があるのはわかっているけど、このあと8km歩いてそこにたどり着いた時に、果たしてそこで寝床を確保できるか確証はない。
そんなことばかりが頭の中をぐるぐる駆け巡ります。
時刻は16時、あんなに寒かったお昼ごろとは打って変わって、太陽がギラギラジリジリ照りつけていて。
気づいてみれば、Ponte Vedra(ポンテ・ヴェドラ)の街をお昼に出発してから一度も休憩を取っていなかった…。
日差しを避ける木陰もない道端で座り込んで水分を摂り、日本から持ってきていた飴やドライフルーツなどの行動食を口に入れ一息ついたところで、Yに提案します。
- この先に「Maruja」っていうカフェがあるみたいだから、そこに行こう。
- それで、お店の人にこの先のカミーノから少し外れたところにあるアルベルゲに電話してもらえるようにお願いして、今日開いているか、ベッドはまだあるかを確認してもらおう。
- 残念ながらアルベルゲに入れなかったら、しんどいけどさらにその先のCaldas de Reis(カルダス・デ・レイス)の街まで頑張って歩こう。
数十分歩いたところで、カフェ「Maruja」が道路の向こう側に見えました。
駆け寄って入口からのぞいてみると、ドアは開いているものの店の中は真っ暗。
思い切って「こんにちはー!すみませーん!」と大きな声で叫んだら、店の奥から店内の電気のスイッチをぱちんぱちんと入れながら、おばあちゃんが出てきました。
「お願いがあるのですが」と切り出します。
この先のBriallos(ブリアージョス)にあるアルベルゲに電話をしてほしい。
これから行きたいんだけど、今夜空きがあるか、いまから入れるか確認したい。
と伝えると、ちょっと怪訝な顔をしながらも手元にあった手作りの電話帳ノートをめくって電話を掛けてくれました。
…番号、知ってるんだ…!
電話で先方と話し始めました。
日本人がふたりいまここに来ていて、そこに泊まりたいって言ってるんだけど。
きょうまだ空いてるの?
うん、うん、わかった。
じゃあそう伝える。
そういって電話を切って、こちらを向いて「OK、もう大丈夫だから」とにっこり。
私の下手くそなスペイン語をちゃんと理解して電話してくれ、アルベルゲの管理人が「ドアは開いてるから入っていい、ベッドに荷物を置いて、シャワー浴びていい」と言ってると分かるように説明してくれて。
よくここまで歩いてきたねえ、よく日本から来たねえ、ブエンカミーノ !って。
涙出た。 pic.twitter.com/OSjcMfhG2f
— ヌー : すっきり、さっぱり。 (@like_a_rhino) June 19, 2019
ほっとして体中の力が抜けるような気がしました。
ジュースを飲みながら、おばあちゃんとお話し。
きょうはBarros(バーロス)のアルベルゲに泊まるつもりで歩いてきたんだけど、そこの雰囲気がどうしても好きじゃなくてあきらめてさらに歩いてきたんだけど、この先どこまで歩くことになるかわからないし、どんどん暑くなってくるし、いざ宿に行ってみて閉まっていたらとかベッドがなかったらと思うと、疲れが出てきて心配でどうしようもなくなっちゃって…
と話すと、ひとつひとつに相槌を打ちながらすごく真剣に聞いてくれる。
「そのアルベルゲのどこが嫌だったの?へー、そんな暗い雰囲気だったの。」
「きょうはどこから歩いてきたの?Arcade(アルカデ)?まあー!それは疲れて当然!」
話しを聞いてもらっているうちにどんどん元気が回復してくる気がした。
18時、がっちりと握手をしてくれるおばあちゃんにお礼を言って、カフェを後にしました。
やさしさがありがたくて、握手して頭を下げた時ちょっと涙がでちゃった。
ほんとうにお世話になりました。
ありがたかった。
※Google Mapでは店名が出てこないのですが、カフェ「Marujo」の位置はここ。
カミーノ8日目の宿をご紹介
おばあちゃんのカフェから歩くこと30分ほどで、Briallosのアルベルゲに到着。
電話で確認してもらっていた通り、わたしたちが着いたときホスピタレイロ(管理人)は不在だったので、先にベッドに荷物を置き、シャワーを浴び、洗濯をさせてもらいました。
「男性用」「女性用」それぞれのドミトリーに10台ずつぐらいの二段ベッドがあり、その2室をつなぐスペースに洗面所とトイレがあるという作り。
実際には男性用女性用はわかれておらず、みんな好き勝手にベッドを確保していました。
ベッドにはそれぞれ使い捨ての不織布のベッドシーツと枕カバーが置いてあり、それを掛けて使います。
いろんな人が寝る場所なので、ベッドバグ(南京虫)などの対策用です。
寝袋を広げて、寝床の準備完了!
寝床が準備できるとほんとうにホッとする。
ドミトリーのそとには、ちょっとしたリビングスペース。
充電はこのスペースにあるデスク周辺で。
寝床からは離れた場所なので、スマホをここに挿して充電するのは盗難がちょっと心配かな…。
わたしはこういうところにスマホを置きたくなかったので、まずはモバイルバッテリーに充電し、スマホへは自分の手元でそのモバイルバッテリーから充電するようにしていました。
充電中に万一盗難に遭っても、モバイルバッテリーならまだ諦めがつきます。
▼わたしのカミーノ持ち物リストはこちら。
1階に男女それぞれのシャワールームがあり、シャワールームの中には4つ程度のシャワーブースが。
衝立で左右は仕切られているもののシャワーカーテンはないので、まあ、後ろからは丸見えですが、キニシナーイ 笑。
シャワールームの外に洗濯機と乾燥機があったので使わせてもらいました。
あとでお金を払おうと思ったらなんと、タダでした。
食事は隣の建物の食堂で。
グリルチキンとステーキをそれぞれいただきました。
宿泊費は6ユーロ。
20時ぐらいにようやくホスピタレイロ(管理人)が現れ、無事チェックインと支払いを済ませることができました。
食堂横の共有スペースでは地域の人たちがコーラスの練習をしていたりして、昔からあるユースホステル!といった感じの宿でした。
「カミーノ9日目」へ、つづく!
今回のカミーノ全体を通していえることですが、振り返ってみるととにかく歩くことと到着することに一生懸命すぎたなと思います。
もっと気持ちの余裕を持って歩けばよかった。
この日助けてくれたおばあちゃんのカフェにしても、あとから地図を見たらそのちょっと奥が自然公園になっていて、とてもきれいな滝があったようです。
ああ、もう一度同じ道を歩きたい…。
などと思いつつ、「カミーノ9日目」の日記へつづきます。
▼バックパック重量4.8kg!わたしのカミーノの持ち物リストはこちらからどうぞ。
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